手作業が機械を生み、ジェンダーは曖昧になる:jw anderson 2020春夏
JW Andersonの2020春夏メンズコレクションは、ジェンダーの流動性を提示した初期コレクションに回帰し、それを現代に合わせてアップデートしている。北アイルランド出身のジョナサン・アンダーソンは2013年春夏メンズコレクションで、同世代のデザイナーのなかでも先陣を切って、ハイファッションにおける伝統的な男性性へ挑戦した。
ネオプレン製のフリル付きショートパンツや、ビスチェをまとった男性モデルたちがランウェイを闊歩する姿は、多くのひとの記憶に残っているはず。悪趣味ギリギリのところを堂々と綱渡りするかのようなそれらのアイテムは、好き嫌いがはっきりと分かれたが、みんなの興味を引いたのは確かだ。今や、業界を牽引するクリエイティブディレクターとして確固たる名声を築いたジョナサン。彼は今シーズン、初期コレクションをブラッシュアップして提示した。
「タキシードテープが吹き飛ばされて落ちるのがいいな、と思って」ショーのあと、コレクション全体に共通する、ユニークなかたちについて問われたジョナサンはこう答えた。「あるいは裂かれたジャケットとか。男性でも女性でも着られるルックです」
今シーズンのショーでは、2020春夏メンズコレクションと2020ウィメンズリゾートコレクションを混淆し、ブランドを象徴する〈共有のワードローブ〉というテーマをブレずに表現した。モデルたちが着用するアイテムは、ジェンダーに関係なく誰でも着られる。
「今の時代におけるフリル付きショートパンツとはどんなものか。その答えにたどり着くまでに、少し時間がかかりました。僕が考えるショートパンツとは、男女ともに、肌を露出することができるもの。どんなひとが着ようとも、どんなかたち、どんなサイズであっても、どこか官能的なんです」
性別を超えたところに、むき出しの官能性が立ち現れる。さらに特筆すべきは、その丁寧なものづくりだ。「1940年代のシルエットを参照し、ボリューミーなバランスを意識した2019年秋冬ウィメンズコレクションのあと、メンズコレクションにもそれを取り入れ、ウィメンズのプレコレクションに活かそうと考えたんです」とジョナサンはパリのLafayette Anticipationsの静かな一角でインタビューに答えてくれた。この場所は普段、現代アートのギャラリースペースだが、今回のショーの会場に使用され、ジョナサンがキュレーションしたアート作品が展示されている。ショーの前には招待客たちが、ケイト・ニュービー(Kate Newby)の吊るされた磁器や、ハリー・クラマー(Harry Kramer)のプラスチックワイヤーのアートワークに足を止めていた。
「〈手作業が機械を生む〉っていう概念が好きなんです」とジョナサンは微笑む。この言葉は彼の初期コレクションのテーマとなっており、ジョナサンファンにはおなじみのフレーズだ。
今回のショーで彼は、編みものキットや、妹が裂いたTシャツにプラスチックビーズを縫いつけたDIYの想い出など古着的なものと、現代の技術で可能となった見事な手仕事とのバランスをうまくとっている。